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Q 起業する前のお仕事についてお聞きしてもいいですか?

前川社長:はい、以前は商事会社で長く勤めておりまして、そこでは紙を中心にいろいろな商材の調達を行う仕事に長く携わっていました。それから、その後に建設関連の会社の役員をやったりしていました。建設会社での在籍は短かったのですが、今の会社を立ち上げるために、いろいろお世話になりました。

久高:そうなんですね。農業とはまったく違うお仕事をされていたんですね。流通畑から建設会社と、そこは以外でした。商事関係の会社では、食品などの商材は扱ってなかったんですか?

前川社長:食品はやってなかったですね。
久高:そうなんですね。でも、ずっと営業畑でやってきたわけですね。商事、建設関連とそれぞれ業種の違うお仕事をされてて、そのあと、農業の世界に入っていくわけですが、そのあたりの経緯が興味深いですが、その辺のところをお聞かせください。

前川社長:初めは、農業ではなく、海洋深層水を農業用水として利用し、それを販売するビジネスを立ち上げようと思い、これまで勤めていた会社を退社しました。これまでの経験を生かせば、独立しても十分やっていけると確信し、思い切って起業を決意しました。

Q 起業する前のお仕事についてお聞きしてもいいですか?

前川社長:そうですね、海洋深層水事業では、陸地で吸い上げた水を農地で活用するんですが、汲み上げた水を農業用水として使うことが前提で、どうしても、農家の方との関わりが出てきたんです。それから、ビジネスを立ち上げるために、いろいろ細かい情報を集めている中で、会社の農業法人化など、いろいろな条件があったりして、どうしても農業を避けることができなくなっていったんです。そこで当初、事業としては3番目に考えていた農業を一番最初にもってきました。とはいっても、それは想定範囲内ではあったんですが、それを着手するのは、まだまだ先の事だろうぐらいに思っていました。しかし事業の方向性が一気に農業の方へシフトして行ったんです。

Q 今でも深層水は活用しているんですか?

前川社長:そうですね。今は止まっています。でも、深層水をとるために近くの土地に7メートルの穴を掘って、海に向かってパイプを通す穴を掘り、さらに沖合のある場所から地下350mまで掘った状態まで工事を進めていたわけですが、その途中で資金など、いろいろな問題で、その工事を中断せざるえなくなったんですね。

建設には大きな予算がかかるので、単体では資金を調達するのは難しいということになり、穴を掘って、海まではいったんですが、しばらくは事業は前に進まないといった状態が続いていました。当時は、どうしようかすごく悩んだじきでした。そこで、事業継続のための資金が厳しくなったので、これまで好意にしていただいていた、財団の方に相談して、出資の可能性をいただいたんです。

久高:その時期は厳しい経営判断をしなければいけず、すごく苦労された時期だったんですね。

前川社長:そうなんです。それから経営を安定させていくために、沖縄美ら島財団の子会社として、増資を行い、株式会社美ら島ファームが設立しました。最初の2年間は、外部の人を起用し、その後継として私が代表となり、現在に至っています。

Q 農業を始められて、作物もいろいろありますが、なぜパインを選ばれたんですか?

前川 そうですね。国産パインといった点で考えた場合、沖縄にもマンゴーやみかんなど南国特有のいろんなフルーツがありますが、その中でもパインは沖縄でしか栽培できないといった優位性があります。パインを通して、沖縄農業の可能性や独自性を広げ、農作物の6次化を通して、もっと社会に貢献できる会社に育てていきたいといった思いが強かったんです。
もともと、パインは酸性土壌でしか育たないので、アルカリ土壌の本部の土地から東村に2万坪の農地を確保し、ハウスと路地で本格的にパインの栽培を始めていきました。

久高 2万坪って、けっこう広いですよね。それからパイン一筋にこだわり、中でも糖度の高い、高品質なゴールドバレルにこだわっていますが、ゴールドバレル種についてもう少し詳しくお聞かせください。 ゴールドバレル種って、もともと沖縄にあったものなんですか?

前川:ゴールドバレル種は、農業試験センターが開発したパインで、すごく糖度が高く、品質のいいパインではあったんですが、栽培しにくいといった点や、農業としての効率があまり良くないといった理由で、ゴールドバレル種の開発はやめようと考えていたんですね。

久高:そうなんですね。パインそのものは素晴らしいんですが、それを販売といった一定のラインで生産していくためには、少し難しい状態だったんですね。

前川:そうなんです。手間がかかる上に、サイズも大きいといった特徴があって、育っていく過程で、実がフラフラして、育てにくいといった欠点もありましたが、その当時、ゴールドバレル栽培に精通した玉城さんといった農家の方が、ゴールドバレル種を引き取って、栽培の課題を少しづつ解決し、出荷数を増やしていきました。

久高:なるほど、栽培や作り方などもある程度確立されていったので、あとはそれを一定量の供給量を増やしていくことが重要になっていくわけですね。

Q ゴールドバレルの栽培ついて、大変だったことはありましたか?

作付け面積2万坪 沖縄東村 沖縄美ら島ファームパイン畑

前川 パインは、緑熟っていう言葉があって。それは何かといいますと、外から見るとまだ緑色の状態なので、一見まだ熟していないように見えるんですが、中はしっかり甘く熟していることがあるんです。フルーツではあまりないケースなんでんすが、それを目では確認できないんで、それを機械を通してチェックしていかないと、ちょうどいいタイミングで収穫することが難しいといった課題がありました。

久高:そうなんですね。ちょうどいい状態を見極めるって、難しいですよね。おそらく豊富な経験や知識に加え、収穫のタイミングを決断する目利きがきもになっていくわけですが、その辺を機械化でしっかり解決していくわけですね。

前川 それで、収穫時期や食べごろ感を判断するといった、ある一定の品質をキープするためには、目視では厳しいということで、思いきって、パインの熟成度合をチェックする機械を導入しました。普段は、指で音の感じで判断するんですが、それでいくと、やはりいくつか熟していないパインが混ざってしまうんですが、機械を導入することで、ほぼ熟しているものとそうでないものが混ざることがなくなりました。そのため、お客さまの手元に届く際に、ちょうどいい状態で熟成したパインを召し上がっていただけるわけです。お客さまからのおいしさや、熟成度合に関してのクレームがほとんどないのも、弊社のゴールドバレルの強みでもあります。

久高 それは、糖度や熟成の微妙なさじ加減をコントロールするゴールドバレルのパインにとって、すごくいい状態でお客さまにご提供できるといった、他社ではできない訴求ができますよね。すごく大きな強みになると思います。

前川 そうなんです。パインの場合、中の状態を表から判断しにくいといった課題があり、良質なパインを一定品質に保ちつつ販売する上で、機械化による解決は非常に大きな利点があると思われます。パインは本当、わかりにくいんです。

久高 表の顔と裏の顔ですね笑 ある意味繊細なフルーツとも言えるのかもしれませんね。笑 甘さを追求するフルーツにとって、熟成のタイミングって非常に大きなポイントですよね。でも、収穫するさいの判断は、経験やある程度音のチェックをして収穫し、最終的に熟成度合のチェックをするわけですね。その場合、収穫されたパインと最終的に出荷される良質なゴールドバレルの割合が同じに近ければよりいいと言えるわけですね。

前川 そうなんです。私どもが栽培するゴールドバレルは、糖度が16度以上でないと、ゴールドバレルとして出荷しないので、15.9度でもださないんですね。それだけ、糖度に対して厳しいチェックをしているんですね。そのため、ものすごく品質には気を使っているんですね。 そのため、収穫されたゴールドバレルの半分は、自社の加工品など、2級品として出荷しております。

久高 なるほど。品質に関しては特に気をつけ、こだわっているんですね。 美ら島ゴールドパインが商品名ですが、180度といった食べ方とか、品質の自社規格でしょうか、こだわりのようなものがありますが、あれは、何かブランドを意識してつくられたんですか? 180の文字を逆さに表記してシンボル化していますよね。あの辺についてもう少しお聞かせください。

前川 そうですね。 糖度の高い良質のパインを高級パインといった形でブランド化していくため、品質に関するこだわりを盛り込んでいく必要があります。そこで、美ら島ファームでは、栽培から収穫、選別、発送といった工程で、一定品質のパインを出荷するため、運び方にもこだわっています。 通常パインは上向きで立てて出荷するんですが、ゴールドバレルは180度逆さに箱詰めします。つまり、それはパインは上部分より下部分の方が2度ほど糖度が高く、それと、逆さに箱詰めすることにより、下部分の甘みが上部分へ流れ込むと言われています。お客様の手元に届く頃に、「ちょうどいい状態でお渡ししたい」といった思いで、発送方法にも工夫しているんです。そうした品質に対するこだわりをブランド化するための取り組みの一つとしてビジュアル化したものが180度プレミアムブランドです。

久高 へ〜、それはすばらしいですね。前川社長のゴールドパインへの思いと、沖縄の農作物のブランド化へのこだわりが伝わります。

Q 経営上、感じたことや学んだことなどあれば聞かせてください。

前川 パインと水産業をやっているんですが、それは全く違ったことをやっているんですね。

久高 はい、水産業というと具体的にどんな事ですか?

前川 そうですね、財団の美ら海水族館の、あの大きな水槽がありますよね、それの管理や、そこに保有されている海洋生物の飼育などを主な事業として請け負っているんですね。 そうした、仕事の内容が根本的に違う業務を、平行して行っているんですが、そこで働くスタッフでの意識の違いがどうしても出て来るんですね。例えば、誰がどれだけの事を行い、どんな課題があるのかなど、社内でもよく分からないといった状況がどうしてもあって、そこはでも、同じ従業員として、社内間のコミュニケーションを円滑にし、部署は違ってても、社内の課題や問題意識を共有しながら、共存していく体制をつくっていかなればいけないと思っているんですが、働く場所が違うので、どうしても社員間の交流が希薄になっていくんですね。そこらへんをもう少し改善し、一体感をもって経営を進めていくため、日々頭を悩ませています。

久高 確かに、少し特殊な環境でもあるので、よりそのへんをまとめていくのが難しいですよね、社内で共通の意識をもって、それを高めていくといったプロセスは。

前川社長:そうなんですね。確かに大変ですが、でも、いまの環境を踏まえながら、いまの課題を解決していくよりよい方法を探っていきたいと思います。社員が現在30名いまして、その半分以上が水産事業のスタッフとして働いています。

久高:何か社員全員が集まって、顔を合わせて交流できる場があるといいですよね。

前川社長:そうですよね。そういった事も、今年は意識的に増やすようにしています。もっと、自分もスタッフと関わる機会を増やしながら、社員との交流を通して、少しづついい形にもっていきたいですね。

Q 最後に、今後やってみたい事やチャレンジしてみたい事などあれば聞かせてください。

前川 そうですね。将来的には、自社の農園をしっかり整備し、農業体験や、そこで採れた農作物やそれを加工した商品の販売、または観光客を取り込んだ飲食事業などを複合的に行う観光体験型の農業施設を構築していきたいですよね。

久高 すごいですね。あと、北部、特に国頭村や東村などのやんばるで世界遺産への取り組みなども沖縄県で進めているようですが、そういった事が今後実現していく中で、パインの産地である東村などのPR活動も加速していく事を期待しています。

今日は、忙しい中、お時間いただきありがとうございました。

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